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腕立て伏せ専門トレーナーの指導法|観察・言葉・動画で動作を変える実践技術

3月18日
読了時間: 12分

更新日:9月18日

腕立て伏せ専門トレーナーの指導法|観察・言葉・動画で動作を変える実践技術

腕立て伏せの指導は、

「もっと深く」

「腰を落とさない」

「肘を伸ばして」

と正解を伝えるだけでは完成しません。


何を見るか。

いつ言うか。

どんな言葉なら本人に伝わるか。

いつ指摘をやめるか。

最終的に、トレーナーがいなくても本人が正しい動作を再現できるか。

ここまでがコーチングです。


私は30年以上腕立て伏せを追い続けてきました。

その経験から強く感じるのは、

指導者の仕事は、正解を言い続けることではなく、本人が正解を再現できる状態を作ること

です。


腕立て伏せ指導を観察・キュー・フィードバック・指示を減らす・自己修正の5段階で進めるコーチング手順

腕立て伏せコーチングの5段階

私は指導を次の5段階で考えます。

STEP

指導者の役割

1|OBSERVE

まず見る

2|CUE

一つだけ伝える

3|FEEDBACK

結果を返す

4|FADE

指示を減らす

5|SELF-CHECK

本人に判断させる

最初から全部説明しません。

見る → 一つ変える → もう一度見る

を繰り返します。


最初に見る3項目+必ず聞く1質問

初回で私が重視するのは、細かな筋肉名よりも動作全体です。

1|肩甲帯

下降時。

最下点。

押し上げ。

で肩周辺がどう動いているか。

左右差はないか。

肩がすくんでいないか。

を見ます。


2|体幹

ハイプランクで、

頭。

肩。

腰。

踵。

が一つのラインとして機能しているかを確認します。

疲労すると腰だけ落ちる人。

胸だけ先に上がる人。

全身を一体化して押せる人。

違いが出ます。


3|押す方向

手で床をどう押しているか。

肩が前後へ流れないか。

一回目と疲労後で軌道が変わらないか。

を見ます。


必ず聞く質問

「腕立て伏せで、何を一番手に入れたいですか?」

フォーム。

回数。

筋力。

30秒。

60秒。

3分。

SASUKE。

体力試験。

舞台。

見た目。

答えによって「正しい指導」は変わります。


一度に直すのは、原則一つ

フォームが崩れている初心者を見ると、

手。

肘。

肩。

腰。

足。

呼吸。

全部を直したくなります。


しかし一度に6個伝えれば、本人は6個を処理しなければなりません。

私は、

今の記録を最も邪魔している一つ

から直します。


例えば、

胸が浅い。

↓

まず深さ。

肘が最後まで伸びない。

↓

まずロックアウト。

腰が落ちる。

↓

まず体幹。

一つ修正。

数REP確認。

次へ。

この順序です。


外的注意と内的注意|どちらか一方に固定しない

運動学習では、

身体の外側で起こる結果へ注意を向ける外的注意と、

身体そのものへ注意を向ける内的注意

がよく比較されます。


外的注意の例は、

「床を遠くへ押す」

「地面を下へ押し込む」

「頭を前へ運ぶ」

などです。


内的注意なら、

「肘を伸ばす」

「腹部を締める」

「肩をすくめない」

などになります。


研究では外的注意がパフォーマンスや運動学習で有利とする結果が多く報告されています。

一方、近年の再解析では、その効果は状況や研究条件によって変わり、常に外的注意が絶対的に優れているとは言い切れないことも指摘されています。


だから現場では、

本人に効くキューを選ぶ

ことを優先します。


PUSH-UP THE HERO式|外的注意→必要なら内的注意→動作へ戻す

基本は、

外的注意から始めます。

例えば、

「床を遠くへ押す」

だけでフォームが改善するなら、それ以上説明しません。

それでも肘が伸びない場合だけ、

「最後に肘を伸ばす」

という短い内的注意を入れます。


改善したら、再び動作全体へ戻します。

長時間、

「肘」

「肩」

「腹筋」

と身体内部を監視し続ける状態にはしません。


最終目標は、

フォームを考え続けなくても、フォームができること。

です。


言葉は短いほど使いやすい

高回数腕立て伏せの最中に、

長い解剖学説明をしても処理できません。

そこで私は、指導言語を短くします。

「深く。」

「最後まで。」

「一直線。」

「床を遠くへ。」

「次の1回。」

「呼吸。」

競技になるほど、キューは短くなります。


30秒競技で50回近い速度を出している選手へ、

一回ごとに長い説明はできません。

動作速度に合わせて、言葉も高速化する。

これも腕立て伏せ専門指導の技術です。


比喩は「伝わった瞬間」に価値がある

フォーム指導では、専門用語よりイメージの方が一瞬で伝わる場合があります。

例えば、

「床を遠くへ押す」

押す方向を理解させたいとき。

「一本の板になる」

体幹ラインを作りたいとき。

「胸を床へ運ぶ」

腕だけで上下する癖を修正したいとき。

「最後の1cmを押し切る」

ロックアウト不足を修正したいとき。


比喩そのものに正解があるわけではありません。

同じ言葉で動きが良くなる人もいれば、変わらない人もいます。

だから、

言う。

↓

2〜3回見る。

↓

変わらなければ言い換える。

これを繰り返します。


フィードバック|言いすぎるほど上手くなるわけではない

フィードバックには価値があります。

抵抗トレーニング研究でも、速度や力発揮などの結果をフィードバックすることで、急性パフォーマンスや長期的な適応を高める可能性が報告されています。


ただし運動学習では、

毎回すべてを教え続けること

が最適とは限りません。

本人が、

今の1回は良かったか。

どこが崩れたか。

を自分で判断する時間も必要です。


私は、

最初は多め。

↓

途中から減らす。

↓

最後は本人に言わせる。

というfeedback fadingを使います。


フィードバックの時間割

ウォームアップ

観察中心。

必要なら一つだけ修正。


技術練習

1セットにつき重要課題を一つ。


メインセット

安全や有効レップに関わる大きな崩れだけ伝える。


セット後

本人に、

「今どこが崩れましたか?」

と聞く。


セッション終了時

改善点を1〜2項目に絞り、次回までの自主練へつなげます。

指導者がしゃべる時間より、

本人が動いて、感じて、考える時間

を多くします。


60分セッション|腕立て伏せ専門指導の実践設計

1回60分なら、私は次のように考えます。

時間

内容

0〜10分

体調確認・ウォームアップ・簡易評価

10〜25分

技術指導・分解ドリル

25〜50分

メインワーク

50〜60分

動画確認・振り返り・自主練設定

0〜10分|評価

呼吸。

肩周辺。

ハイプランク。

前回課題。

を確認します。


10〜25分|技術

手幅。

肘。

可動域。

ロックアウト。

体幹。

の中から、その日の優先課題を扱います。


25〜50分|メイン

初心者。

高回数。

速度。

競技。

目的に応じて内容を変えます。


50〜60分|振り返り

動画。

回数。

主観。

を見ながら、

次回までに何を一人で練習するか

を決めます。


初心者の60分|正解を詰め込まない

初心者なら、

ウォームアップ。

ハイプランク。

インクラインまたは膝つき。

通常フォーム。

という順序で進めます。


例えば、

ハイプランク30秒×2。

↓

膝つきで可動域確認。

↓

通常フォーム。

↓

3セット×10回。

という構成です。


ただし「3×10」が目的ではありません。

その人が、

正しい一回を再現できる回数

で止めます。

20回できても、11回目から崩れるなら10回で止める方が技術練習として価値があります。


競技者の60分|疲労したフォームを見る

競技者では、最初の5回だけ見ても十分ではありません。

問題は、

30秒。

60秒。

100回。

3分。

という疲労下で起こります。


だから、

前半。

中盤。

終盤。

のフォームを分けて見ます。


例えば、

開始時は完全伸展。

↓

40秒から肘伸展不足。

↓

50秒から腰が落ちる。

なら、

「筋力不足」

という一言では終わりません。

どの能力が、何秒目から崩れたか

まで指導材料にします。


ケース1|初心者の肘が外へ張る

まず、

「肘を45度にしてください」

と角度だけを押し付けるのではなく、

本人が自然に押しやすい位置を探します。

「床を遠くへ押す」

という外的キューで変わるか確認。

変わらなければ、

「肘を少し身体側へ」

と短い内的キューを追加。


それでも肩に痛みがある場合は、

負荷。

可動域。

手位置。

を下げます。

痛みを我慢させてフォームを完成させることはしません。


ケース2|大会前なのに回数が伸びない

競技者の場合、

もっと追い込む。

もっと回数を増やす。

が正解とは限りません。

疲労。

睡眠。

競技ペース。

フォーム。

スタート速度。

心理的な緊張。

を見ます。

大会直前なら、

能力を新しく作るより、

今ある能力を本番で出せる状態へ戻す

ことが重要です。


動画は「答え合わせ」に使う

腕立て伏せは高速になるほど肉眼だけでは見逃します。

胸の深さ。

肘伸展。

腰の沈み。

左右差。

速度低下。

をスマートフォン動画で確認します。


動画指導は、

撮る。

↓

本人に先に見てもらう。

↓

本人に問題点を言ってもらう。

↓

トレーナーが補足する。

↓

もう一度撮る。

という順番が有効です。

最初からトレーナーが全部答える必要はありません。

腕立て伏せ動画解析で深さ・肘伸展・体幹ライン・左右差・疲労によるフォーム崩れを確認する5ポイント

動画を見る5つのポイント

1|DEPTH

胸が毎回同じ深さまで下がっているか。

2|LOCKOUT

トップで肘が伸びているか。

3|LINE

頭から踵までが崩れていないか。

4|SYMMETRY

左右差が増えていないか。

5|FATIGUE

何回目・何秒目から崩れ始めたか。

「フォームが悪い」

ではなく、

どこが・いつ・どれくらい変わったか

まで言語化します。


マシンと動画|役割を分ける

PUSH-UP THE HEROにはデジタル腕立て伏せマシンがあります。

しかし、

マシンがトレーナーの代わりになるわけではありません。

マシンは、

回数。

時間。

指定条件。

を客観化する道具です。


動画は、

軌道。

左右差。

全身フォーム。

を確認する道具。

トレーナーは、

原因を考える。

キューを選ぶ。

練習を作る。

役割が違います。

道具は指導者の判断を補助します。


宿題|「頑張っておいて」では弱い

自主練は具体化します。

悪い例は、

「次回まで腕立て伏せを頑張ってください」

です。

これでは、

何回。

何セット。

何を意識。

いつ。

どこまで疲れる。

が分かりません。


良い宿題は、

月・木。

10回×3セット。

RPE7。

ロックアウトだけ確認。

最後の1セットを側面動画で撮影。

というレベルまで具体化します。


自主練は次回の評価につながって初めて意味がある

宿題。

↓

動画。

↓

次回評価。

↓

修正。

↓

新しい宿題。

この循環を作ります。

PUSH-UP THE HEROの週1指導では、対面60分だけではなく、次の6日間をどう使うかまでトレーニング設計の一部と考えます。


指導者自身も毎週トレーニングする

指導技術も、練習しなければ伸びません。

私は指導者側にも次の訓練が必要だと考えます。


セッションを見返す

説明が長すぎなかったか。

同じことを何度も言っていないか。

本人が考える時間を奪っていないか。

を確認します。


キューの言い換えを作る

同じ課題へ、

5〜10種類の言い方を準備します。

一つの言葉が伝わらなければ、違う入口から伝えます。


すぐ言わない練習をする

崩れを見つけても、一瞬待つ。

本人が修正するかを見る。

自分で修正できたなら、それは非常に重要な成長です。


コーチングで避けたい5つのこと

1|毎回全部直す

情報過多になります。

2|専門用語で納得させる

理解と実行は別です。

3|トレーナーだけが話す

本人が考える時間がなくなります。

4|フォームを一種類へ押し込む

体格、目標、競技ルールによって最適形は変わります。

5|指導者がいないとできない状態にする

最終的には、一人でも再現できなければなりません。


良い指導のゴールは「自分で直せる人」を作ること

最初は、

トレーナーが見る。

↓

トレーナーが直す。

でも構いません。


しかし数週間後には、

本人が気づく。

↓

本人が直す。

へ変えます。

さらに、

本人が崩れる前に予測する。

まで進めば理想です。

指導の最終地点は、

トレーナーへの依存ではなく、自立です。


FAQ|腕立て伏せのコーチングと指導

外的注意と内的注意はどちらが正しいですか?

どちらか一方に固定する必要はありません。外的注意を基本にしながら、特定部位の修正では短時間の内的注意が役立つ場合があります。


毎REPフィードバックした方が早く上達しますか?

急性パフォーマンスでは頻繁な結果フィードバックが役立つ場面があります。一方、技能学習では本人が自己評価する機会も必要です。目的によって頻度を調整します。


初心者には何を最初に教えますか?

一度に全部ではなく、安全性と動作全体へ最も影響する課題から一つずつ進めます。


動画は毎回必要ですか?

必須ではありません。ただし高速反復や疲労後の崩れなど、肉眼で確認しにくい課題では非常に役立ちます。


トレーナーが毎回違う言い方をしてもいいですか?

狙いが同じなら、本人に最も伝わる言葉へ変えて構いません。指導言語そのものではなく、動作がどう変化したかを確認します。


どのくらいでフォームが変わりますか?

一回のキューで瞬間的に変化することもありますが、安定して再現できる技術になるまでには反復が必要です。


まとめ|教える技術とは「言う技術」だけではない

腕立て伏せ専門トレーナーに必要なのは、

解剖学。

筋トレ知識。

だけではありません。


観察する。

一つに絞る。

言葉を選ぶ。

待つ。

動画を見る。

本人に考えさせる。

自主練へ変える。

次回もう一度測る。

ここまでが指導です。


私は腕立て伏せを30年以上追ってきました。

その中で感じるのは、

同じ言葉が、すべての人に同じように効くことはない

ということです。

初心者。

競技者。

高回数型。

スピード型。

舞台パフォーマー。

SASUKE挑戦者。

目標が違えば、キューも違う。

指導のタイミングも違う。


だから腕立て伏せ専門指導では、

「正解を知っていること」より、「その人へ正解を届かせること」

が重要になります。

そして最も良い指導は、

トレーナーがいない場所でも、

本人が自分のフォームを感じ、

判断し、

修正し、

成長できる状態を作ること。

それが、私が考える腕立て伏せコーチングの本質です。


フォームを直すだけでなく、自分で再現できる技術まで身につけたい方へ。

現在のフォーム、回数、速度、疲労時の崩れ、目標を確認し、一人ひとりに合わせて指導内容と自主練を設計します。

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